岩本和也さん
草原基金が新聞に掲載された翌日、僅かな募金を手に新聞社に出向き、「お金も必要だけど、ボランティアを募ったらどうですか。」とウンチクをたれ、翌年始まった初心者研修会に参加したのが私と野焼きの出会いです。
幼い頃から慣れ親しんだ阿蘇の草原が危機に瀕していると聞いた時、自分が出来るささやかなお手伝いとして、私は野焼き支援ボランティアを選びました。
私の仕事は消防士です。野焼きは、自由気ままに走る火を如何に操るかという、とても難しい作業です。阿蘇の景観を守ると共に、叩いて火を消すという消火の原点を学ぶことは、私が仕事の初心に返る時でもあります。
当時の私は勤務が終わるのは朝の8時半、どんなに急いでも集合時間に間に合いません。非番をやりくりしましたが、最初の年は週末の天候不順もあり、結局野焼きには巡り会えませんでした。
そんな私の楽しみは、作業に集う方々(神様)との会話です。「春から夏への緑、秋の銀、冬の枯れた茶、野焼き後の黒、そして忘れ雪の白。阿蘇には五つの顔がある。」ある牧野の方が言われたそんな言葉にも、そこに暮らす人々の、草原への思いが伝わってきます。
今日はどんな神様に会えるかな、そんな期待に胸をわくわくさせながら向かう阿蘇路も私のささやかな楽しみの一つです。
(草原だより23号より)