設立趣意書
阿蘇草原再生千年委員会の設立趣意書
平成22年10月12日
昭和9年に国立公園に指定された阿蘇の草原は、農畜産業の営みを中心とする人々の働きかけによって、千年以上もの永きにわたって維持されてきました。私たちは、阿蘇に暮らす人々のおかげで、美しい草原景観、清らかであふれる水、可憐な草花などの多くの恵みを受けてきました。阿蘇の草原は、熊本のみならず、九州、そして国民共有の財産です。
その草原が、今、危機に瀕しています。
今、私たちが立ち上がらなければ、「千年の草原」は5年先、10年先にはなくなろうとしているのです。このまま推移すれば、熊本県が取り組んでいる世界遺産登録も難しい状況となります。
このような状況を憂い、阿蘇の恵みを受けている九州全県の多くの人の手で、草原の恵みを将来の世代に引き継ぐことを目的に、「阿蘇草原再生千年委員会」を設立したいと思います。
私たちの阿蘇は、年間3000mmもの降雨量があり、6本の一級河川の源流域となっており、九州の水がめといえます。水収支に関するデータからは、草原も森林に劣らず地下水を涵養する力があり、阿蘇の草原は九州の水供給に大きな役割を果たしています。
また、日本一のサクラソウ群落が見られるなど、阿蘇の草原は生物多様性の宝庫でもあります。全国的に二次草原が減少するなか、広大な面積が残されている阿蘇は草原性の動植物にとって最後の砦であり、日本の生物多様性を保全していくうえで、かけがえのない価値を有しています。
さらに、波打つ緑の草原は、年間1900万人に及ぶ国内外の多くの観光客を魅了し、観光産業を通じて大きな経済効果をもたらしています。
しかし、草原の維持管理の担い手である牧野組合は、高齢化と後継者不足が進行し、過去9年で、有畜農家は41%、放牧頭数は26%減少しています。既に野焼きなどの作業が困難となりつつあり、もはや阿蘇で暮らす人々の手だけで草原を守ること難しくなっています。
こうしたことから、牧野組合と草原に関わる団体・個人・行政機関が参加する「阿蘇草原再生協議会」が平成17年に設置され、野焼きに必要な防火帯の整備やボランティアの派遣など草原の保全・再生に向けた取組が連携して進められてきましたが、資金面やボランティア数で、現在の草原を維持していくことはきわめて難しくなっていると言わざるを得ません。
本年は国連が定める国際生物多様性年であり、10月には生物多様性条約締約国会議が名古屋で開催されます。阿蘇での取組は国際的にも発信していくべき重要な取組でもあります。
「阿蘇草原再生千年委員会」は、阿蘇の草原を守っている阿蘇草原再生協議会の活動を支えることを目的として、行政、経済界、学会、報道機関で構成する予定で、3年かけて阿蘇の草原の危機的状況と再生に向けた取組を広く知っていただくための「キャンペーン」やイベントの展開を行うとともに、目標1億円の「阿蘇草原再生募金」の呼びかけ、さらに、これらの活動を通じて「世界文化遺産登録」の支援に取り組みます。
つきましては、本趣旨にご賛同いただき、「阿蘇草原再生千年委員会」ご参加いただきますようよろしくお願い申し上げます。
呼びかけ人
阿蘇草原再生協議会
阿蘇グリーンストック
熊本日日新聞社