【対談】企業の成長と環境保全の両立とは

2011年から「ご当地WAON」やボランティアを通じて阿蘇の草原再生に寄与している「イオン九州株式会社」。今回は環境保全と企業成長の両立をテーマに語り合います。

01企業が環境保全に取り組む意義

増井 1万3000年前から存在する阿蘇の草原は、野焼きや採草、放牧など人の手によって維持されてきました。人々のライフスタイルの変化や高齢化、過疎化によって広大な草原の維持が困難になってきた流れを受けて「阿蘇グリーンストック」では、25年前からボランティアの受け入れ支援を行い、牧野を管理する地域の人々とつなぐ活動を進めてきました。

坂本 福岡県まで流れる筑後川の源流域であり、〝九州の水がめ〞と称される阿蘇は、九州の宝です。熊本県では「阿蘇草原応援企業サポーター認証制度」を創設し、草原維持に積極的に取り組む企業や団体を支援していますが「イオン九州株式会社」はいち早く賛同してくださいましたね。

イオン九州株式会社   執行役員 コーポレートコミュニケーション本部  社長室長 吉田 圭司 さん

吉田 私たちの本社は福岡ですが、会社の名前にも〝九州〞の文字が入っているように、視点は九州です。熊本の草原を支援することに違和感はありません。2011年には、利用金額の0.1%を「阿蘇草原再生募金」に寄付するご当地WAON「阿蘇千年の草原WAON」を立ち上げました。また、毎月11日のイオン・デーに開催する「幸せの黄色いレシート」の日では、応援したい団体にレシートを投函すると、レシートの合計金額の1%と同額の品物を寄贈する取り組みも行なっています。

増井 WAONカードを使ったり、レシートを投函するだけで、草原保全に関わることができるしくみは、環境保全活動に対する敷居が下がります。暮らしの一端で「草原」の存在を意識をしてもらえるだけでもありがたいです。

坂本 「イオン九州株式会社」では、30年以上前から植樹に取り組んだり、「ご当地WAON」を取り入れたりと、地域に積極的に目を向けていますね。

吉田 イオングループには「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」という理念があります。スーパーとして単純に商品を売るだけでなく、従業員の地域貢献の意識は高いと感じています。

「阿蘇千年の草原WAON」のご利用金額の一部は、「阿蘇草原再生募金」に寄付されています

02世界的に高まる環境意識

坂本 世界的な流れで言えば、今後は「30by30」に代表する〝生物多様性〞や

〝脱炭素〞がキーワードになると思います。そうしたなかで御社では、草原の保全に対してボランティアや資金を捻出することで、お客さまとどういう風につながっていくとお考えですか?

吉田 地球規模の環境を守るためには、一人一人の日常とつながって行動を起こすことが重要です。それが社会を変える力を生むのであれば、私たちはそこを先導する存在でありたいと思っています。

坂本 店頭での取り組みやそれに対するお客さまの反応はいかがでしょうか。

吉田 わかりやすい例でいえば、お買物袋を有料化したばかりの頃は、売上げも一時的に落ちました。それでも将来的に脱炭素や排プラにつながる活動は、社会をいい方向に導いていけるものなので諦めずに続けています。

坂本 環境保全に働きかけて行くことは、多少抵抗があったとしても長い目で見れば、御社や地域のためになるということですよね。

吉田 今は個社で試みていますが、今後は同じ価値観を共有する仲間を増やしながら、活動のうねりを大きくして、社会に広く浸透させていけるように働きかけをしていきたいと思っています。

阿蘇草原再生千年委員会  委員長 坂本 正 さん

03阿蘇草原を守る企業の輪

坂本 従業員の方がボランティア活動に参加することで、意識の変化や地域とのつながりができることは、会社での活動自体に影響があるとお感じになりますか。

吉田 それは大いにありますね。地縁型のコミュニティが崩壊するなかで、私たちのような存在が地域活性化に寄与することは重要な意味を持ちます。商品を買うだけでなく、世代を問わず楽しめて、知らず知らず生物多様性に参加できる。そういう場づくりは会社としての社会的使命ですし、目指すところは共感型のコミュニティの再構築だと考えています。

坂本 お店の周辺に暮らすお年寄りや子どもが一時的にでも共有できる空間があって、その中心に食やイベントがある。まちのイオンを拠点としてとらえ、そこに地域参加型の場が生まれれば高齢者社会の新しい未来が描けますね。

増井 草原保全の視点で言えば、ボランティアの登録者数は1000名ほど。年間延べ2200人以上の参加者がいらっしゃいますが、3割は福岡の方です。わざわざ遠いところに行って、お金も汗も流すなんて昔は考えられなかったと思います。これは変遷する時代の中で「価値観の一致」が重視されていることを示唆しています。一方で、企業も人と同じようにいろんな価値観や社格がある中で環境問題に明言し、具体的に行動されてるところもある。オール九州で考えれば、協力することで解決できることもある。そういった意味で、共感型のコミュニティの再構築をしているとも考えられます。

公益財団法人 阿蘇グリーンストック 専務理事 増井 太樹

吉田 そうなんです。お客さまに活動を知って頂くために、表彰式や募金のお渡しも店頭で開催したいと思っています。草原保全を例にとっても、背景には奥深い壮大なストーリーがあります。今後は、お客さまの中にある環境保全に対する想いや活動の芽をどのように具現化し活動につなげていくかが課題だと感じています。

増井 もちろん草原保全活動を通じて企業さん自身の価値を高めるというところも、大事な部分です。草原だけが盛り上がるのではなく、草原と関わることで企業も盛り上がるという状況を一緒に作っていけたらいいですね。

坂本 価値というものは、新しく作るのではなく、既存のものを膨らませて付け足していくこと。すでにあるWAONカードの価値をもっと高められるように、ぜひ「イオンモール熊本」での贈呈式やイベントを企画して一緒に地域を盛り上げていきましょう!


草原保全に参加しませんか?

維持・再生に多くの支援を要する草原。個人だけでなく、企業の技術力や広報力、人材力を活かし、どんな形でも草原支援は可能です。ぜひ企業の個性や思いを活かして阿蘇の草原保全に取り組みませんか?

募金について詳しく知りたい方はこちら
https://www.aso-sougen.com/act/donate/

ボランティアへの参加について詳しく知りたい方はこちら
https://www.aso-sougen.com/act/volunteer/

阿蘇草原応援企業サポーター認証制度について
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/21/116165.html

カテゴリー /
SNSで
シェアする
  • X にポスト
  • Facebook でシェア
  • Line でシェア
記事一覧

関連記事