【対談】阿蘇の草原から広がる社会貢献の輪

企業が社員の社会貢献を支援することは、企業活動と社会的人財の育成に相乗効果を生む。
県内でもトップレベルの取り組みを誇る「KMバイオロジクス株式会社」にお話を伺いました。

阿蘇に広がる美しい草原の風景

01阿蘇草原保全に尽力、社会と社員に好循環

坂本 2022年に「昆明・モントリオール生物多様性枠組」で新たな世界目標が採択されました。環境保全に対する意識が世界的に高まるなかで「KMバイオロジクス株式会社」は、積極的に環境保全活動に取り組まれています。

永里 弊社の親会社である明治ホールディングスは「こころとからだの健康に貢献」「環境との調和」「豊かな社会づくり」などをサステナビリティビジョンに掲げています。それは私たちが地元企業として、これまで事業を通じて培ってきた技術や想いそのものです。私自身も環境問題には高い興味関心がありますし、社会貢献に積極的な姿勢を示す社員は多いと感じますね。

KMバイオロジクス株式会社 代表取締役社長 永里 敏秋 さん

坂本 なかでも草原保全に尽力する理由をお聞かせください。

永里 阿蘇の草原は、畜産や農業との密接な関係性によって守られてきたものであり、九州北部全域の川の源流として人々の暮らしを支えてきた「九州の水がめ」です。その草原の面積が高齢化や過疎化、ライフスタイルの変化にともない減少傾向にあると知りました。私たちも地元企業として何か貢献することはできないか、と考えたことがきっかけです。

坂本 現在、野焼きボランティアの登録者は1000名。熊本市内と福岡県の方がほとんどですが、その内の70名が「KMバイオロジクス株式会社」の社員の方々です。環境に対する積極的な姿勢と活動の広がりには目を見張るものがあります。

三宅 これまで地域で踏ん張ってきた人がいたからこそ、阿蘇の草原は守られてきたわけですが、実際に今年度から野焼きを断念するという集落もあります。草原維持が困難な状況は今後も続くことが予想されますから、非常にありがたい取り組みです。

坂本 環境保全への使命感だけでなく、普段立ち入ることのできない牧野からの景色の美しさ、景観維持に貢献できることへの満足感が高い。ボランティアを通じて癒しと環境保全の好循環によって、草原の価値の周知に努めていきたいですね。

02社会貢献参加を促す草原への正しい理解

三宅 生物多様性の損失を食い止め、回復させるという「ネイチャーポジティブ」が国際的なゴールとなっています。このゴールに向け、陸と海の30%以上を保全しようとする世界目標「30by30」が注目されており、現在、阿蘇地域では国立公園エリアを広げる取り組みを進めています。世界文化遺産登録などの動きもあり、阿蘇草原の重要性は今後も増すと考えられます。

坂本 一方で、まだまだ阿蘇の草原が野焼きによって維持されていることを知らない方も多いです。広大な面積を燃やす野焼きによって排出されるCO2を懸念されますが、復元力の高い草原は阿蘇地域全世帯の年間CO2排出量の1.7倍の炭素を固定化します。CO2削減問題も優にクリアしているんです。

三宅 生物多様性の視点からみても、草原には600種以上の植物、100種以上のチョウ類が暮らしており、希少生物の宝庫です。草原の恵みを活かす知恵と文化は世界に誇れる財産になっていくはずです。

永里 そうした意味でも草原に対する正しい理解を持つこと自体、草原保全活動につながると考えます。「阿蘇グリーンストック」さんを招いて草原に関するセミナーを開催したり、野焼き支援ボランティアの初心者研修への参加をサポートすることで、個々の成長と環境保全の両立が期待できます。

阿蘇草原再生千年委員会 委員長 坂本 正 さん

坂本 今後は温暖化による感染症のリスクも懸念されています。感染症のリスクを抑え、地球上に暮らす生物が生命を維持していくために、改めて環境維持に努める必要性を感じます。

永里 おっしゃる通りです。人間の手が届かないほど温暖化が進む前に、それぞれの国々、それぞれの企業、そこに暮らす人々が本気で取り組まないといけません。

03高まる環境意識から広がる社会貢献の輪

坂本 里山文化から生まれた持続可能な暮らしを続けてきたことが、日本における〝自然〞の特徴です。近年は耕作放棄地の増加が問題視されていますが、御社は耕作放棄地の取り組みも始められたと伺いました。

永里 阿蘇の耕作放棄地を0.2ヘクタールお借りして野菜づくりにチャレンジしています。毎回、社員の家族を含めて10〜20名という参加者がいるそうです。先日、収穫した野菜を子ども食堂に届けたり、マルシェも開催したとか。あくまで社員の自主的な活動ですが、その先の行動が素晴らしい! 個人的にとてもうれしく思った出来事です。

三宅 畑仕事をするなかで、きっと害獣問題にも遭遇するはず。問題を紐解いていくうちに、林業や農業の荒廃の危機を身をもって経験することも大きな学びですよね。

環境省 阿蘇くじゅう国立公園管理事務所 所長 三宅 悠介 さん

永里 そもそも現代人のライフスタイルのなかで、土に触れることそのものが有益ですよね。自分のペースで活動することが、日ごろのストレスからの解放につながったりとか。企業として人的資本の持続可能性を考える上でも、こうした活動がもたらす意義は非常に大きいと感じます。

坂本 最後に、企業として環境保全に取り組む上で大切なことはなんだと思われますか?

永里 弊社は事業を営む上で、年間70万トンの水を使いますが、地道に続けてきた地下水涵養が実を結び、近年ようやくウォーターニュートラルが叶いました。さらに弊社の菊池研究所敷地内の『明治グループ自然保護区くまもとこもれびの森』*は、継続してきた生物多様性保全の活動が認められ、国の「自然共生サイト」に認定されました。大切なことは、企業活動と社会貢献の同時実現ができることに気付き、具体的なアクションを起こすこと。そこから広がる可能性を信じて継続することではないかと思います。それが未来を拓くと確信しています。

*『明治グループ自然保護区 くまもとこもれびの森』は、KMバイオロジクス株式会社の登録商標です。

草原保全に参加しませんか?

維持・再生に多くの支援を要する草原。個人だけでなく、企業の技術力や広報力、人材力を活かし、どんな形でも草原支援は可能です。ぜひ企業の個性や思いを活かして阿蘇の草原保全に取り組みませんか?

募金について詳しく知りたい方はこちら
https://www.aso-sougen.com/act/donate/

ボランティアへの参加について詳しく知りたい方はこちら
https://www.aso-sougen.com/act/volunteer/

阿蘇草原応援企業サポーター認証制度について
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/21/116165.html

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